ホメオパシーは、今から200年以上前にドイツ人医師サミュエル・ハーネマンによって体系化された医療です。私たちが本来持っている自然治癒力、自己治癒過程に働きかけ病気からの回復を手助けします。現代医療の薬のように症状を抑えこんだり(抗うつ薬、抗アレルギー薬など “抗”という名の薬)、取り除いたりする治療ではありません。
ある症状を引き起こす物質は、同じ症状を持つ病気の治療に効果があるという“類似の原則”が基本です。たとえば、不眠で悩んでいる人にカフェインを含んだコーヒーから作られるホメオパシーの薬(レメディ)で不眠の治療をします。病気の人の症状全体をひとつのパターンとしてとらえ、それにもっとも類似しているパターンを持つレメディによって、その人の持つ自然治癒力に刺激を与えると考えられています。
現在、世界の80カ国以上で用いられているホメオパシ―はヨーロッパでは約30%の人がヘルスケアとして利用してます。ヨーロッパでは日本における漢方のような位置づけにあります。世界ではホメオパシーの治療は医師(および獣医師、歯科医師)が中心ですが、国によっては医師の資格のない治療者も行っています。医師のみが患者さんにホメオパシーで治療ができる国としてフランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ロシア、メキシコなど17カ国があげられます。その一方で英国やドイツ、スイスなど医師以外の治療者がホメオパシーを行っている国では、現代医療を遠ざけるケースもあり色々な問題が起きています。ほとんどの国でレメディは医薬品として認可を受けています。特にヨーロッパでは欧州薬局方(European
Pharmacopoeia: EP) と欧州議会の指令(Council Directive)によって医薬品として法的に管理されているのです。
西洋医学にもとづいた診察や検査、予後の判断はもちろん、通常の診察に加え、ホメオパシーの問診を行います。ホメオパシーの診察は2つの柱からなっていると言えます。ひとつは病気の人をホリスティックに理解し、その人特有のパターンをとらえること、そしてそのパターンに最も類似したレメディを探すことです。喘息であっても一人ひとり違ったレメディとなり、オーダーメードにレメディを選んでいくのです。診察は待合室から始まっています。患者さんの外見やジェスチャー、癖、アイコンタクトからその人を理解することが始まります。患者さんが自分から話をできるような場をつくっていくことも大切です。問診は全身の状態として、体温、気候への反応、症状の悪化する時間や体位。発汗、睡眠、月経。食欲、食べ物の好みなど生理的な状態について質問をします。精神的状としては情緒面や性格面のほかに、意思、理解力、記憶などの認知に関する状態も聞いていきます。そして一番辛い症状については原因や部位そしてどんな感覚があって、症状が悪くなったりよくなる要因を詳しく聞いています。
花粉症を訴える患者さんにホメオパシーで治療すると、1/3くらいの人達にスギ花粉から作られたレメディが効果的です。これは「アイソパシー(isopathy)」と言って、病気を起こす原因物質そのものを用いた治療法です。残りのうちの1/3は、その人の花粉症の症状を診て処方します。これは健康な人が服用すると、その症状と似たような症状を起こさせる物質を用いて作ったレメディで治療する。たとえば、鼻がかゆく鼻水がたくさん出るのなら、アリウム・セパというタマネギのレメディを使います。さらに残った1/3は、その人の体質全体を診て処方します。8割方の患者さんが良くなっていくようです。
うつ病でホメオパシーを希望される患者さんのほぼ全員が、すでに抗うつ薬を服用しているかたです。うつ病になったきっかけや取り巻く環境などその人一人ずつ違います。うつ病という疾患ではなく、うつ病の人一人ひとりにオーダーメードで治療が行えるのがホメオパシーです。ホメオパシーはその人自身の持つ治る力に働くため、何年もうつ病の人が3カ月で回復することはありません。まず治療の第1段階はうつ病の薬はそのままの状態で、日常生活がホメオパシーを受ける前よりよりよくすごせるようになることです。
そして第2段階では抗うつ薬の種類や量を減らすことができるようになることです。
薬も必要なくなりレメディのみで改善していく経過を見ていきます。
第3段階ではレメディも必要なくなり、うつ病からの回復と言えます。
ホメオパシーでは、うつ病の人の語る物語を一人一人違った意味合いの中で理解し、それにあわせてレメディを選択していきます。治療者はまるで患者さんと一緒にダンスを踊っているように、この人の回復の場面に立ち会うことができるのです。ホメオパシーの治療の過程は多彩で多様です
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